鉄工所の三代目がもがくblog

鉄工の仕事の話はほぼ出てこない

3Dスキャナでガスプラントをリバースエンジニアリング

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ガスプラントの図面化テスト

4年程前になりますが、都市ガスプラントの3Dスキャニング及びモデリングを行いました。

これは3Dスキャナとモデリングの精度と実用性を確かめる為に行った実験です。

結論から言うと非常に高精度な図面が得られたので、図面が失われていたり増改築を繰り返し現状の図面が存在しない建築物の再図面化が可能であるとの確証を得ることができました。
ちなみに冒頭の画像はそれぞれ左上から時計回りに写真/点群/2D/3Dとなっています。

その時の計測データとモデリング結果はYoutubeにアップしてあるのでこちらもご覧ください。
計測は地上で行っただけですが、カメラアングルを変えて上からの視点を再現することも可能です。
(勿論、タンクの真上は地上からの死角になるので点群は取得できていませんが。)


 

計測対象と機材について

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計測対象は地元の都市ガスプラントです。

機材はFARO Focus3Dを使います。

計測回数は25回、所要時間は5時間程。

計測範囲は今計ったら(←ココ重要)22m*18m程ですので広さ的には簡単な部類です。
//3Dスキャンの強みは再度現地に出向かなくても寸法の取得が可能なところ。
//点群の状態では精度のある計測は難しいのですが簡易的な計測には十分です。

ただ、範囲は確かに狭いのですが配管が複雑に伸びているのでなるべく少ない手数で死角を無くすように計測する事が重要です。
このあたりは慣れの問題ですが、スキャナ位置を三脚の高さを調節して高低差をつけてみたりレーザーポインタを使って見通しを確認したりして対応しています。

計測結果とモデリング

残念ながら計測の様子の画像は一切残っていませんでしたので計測済みデータの画像を。

時間かかりすぎて夜になってますが、配管も完璧に計測できました。

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次にモデリングを行い、3DCADデータを作成します。
点群の状態ですとデータ量が膨大になりますし、そもそもこのままでは配管や面の認識ができません。
このモデリングが計測データに息を吹き込む重要な作業であり、そして(3Dスキャンの比ではないほど)莫大な労力がかかる辛い作業でもあります。

最近はモデリングソフトの形状自動認識もかなり強化されてきてはいますが、過信は禁物であり、手作業が大部分を占めます。

こちらもモデリングの様子が残っていないので省略。

いずれ何らかの形でこの苦行の様子をお見せできればと。

比較と検証

写真と点群、そして3Dモデルの比較は以下の通りです。

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実測して検証も行いました。

この方法でどれだけ精度を担保できるかは微妙なところではありますが。

ちなみに、1mm以下の精度が必要なデータの作成は弊社では不可能である事を先に明記しておきます。

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この他にも、3Dモデルから出力した平面図とプラントの建造時の図面との重ね合わせの検証も行いましたが、誤差らしい誤差は見受けられませんでした。

元図から精度よく建設した方々の技術と、今回のスキャナの精度があってこその結果だと思います。

さすがに元の設計図は出せませんので、こちらは3Dスキャンで作成したモデルから出力した図面単体となります。

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結論と用途と応用

3Dスキャナを用いれば現状を図面に落とす事は可能であるとの結論に至りました。

この技術の用途についてですが、実際にご相談のあったケースをご紹介しますと"死んだ配管を迂回して配管の増設を繰り返した結果、何が何やら分からなくなってしまい当然場当たり的工事なので全体を把握できる図面もなくどうにかして図面化して整理したい"と言ったものがあり、まさにこのような場合に生きてくる技術ではないかと思います。

他にも、折角の3Dモデルですのでテクスチャを貼るなどしてCGやゲームのオブジェクトとしての利用も可能です。

特に今回はガスプラントですので、安全教育3Dシミュレータのベースとしての利用が考えられます。

という訳でUnityで作ってみたのがこちら。

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"ここからガス漏れした場合ここのバルブを**秒以内に閉めればクリア"と言った物を想定していたのですが、オブジェクトをタップして爆発させるところで止まってしまっています。
止まっているというか最初から逸脱していると言われそうですが、これはゲームオーバー画面が先にできてしまっただけで他意はありません。問題なし。

それでは今回はこのあたりで。